自発的に組み上がる特性を備えた高性能な有機分子触媒の開発
名古屋大の大井貴史教授らの研究グループでは、イオン間相互作用と水素結合を巧みに使って、自発的に組み上がる高性能のキラル(三次元の物資で、その鏡像と重ね合わすことができない性質を持つ)分子触媒を創り出し、それを活用することで、炭素と炭素を望みどおりにつなげて欲しい構造の物質を選択的に合成するための新しい化学反応の開発に成功したというもの。
これは、片方は、アミノ酸から合成できるキラル有機陽イオン部位(リン元素)を持つ陽性の性質の有機分子と
他方は、分子の形を変えやすいシンプルなフェノール類の混合溶液(フェノール類3分子)とを
組み合わせることで、イオン間相互作用とNH結合部の水素のフェノール由来の酸素への水素結合により配位した構造の高性能のキラル分子触媒が創り出せることができるようになった。
このようにして自己組織化した有機小分子の集合体が、望ましい形に炭素と炭素をつなげて目的物のみを作るための高性能な分子触媒として作用することを確認したというもの。
自然の模倣との観点から、生体内触媒とて機能するタンパク質は、水素結合のような分子間に働く弱い結合力を利用してその三次元構造を組み上げ、基質となる分子を捉えて活性化し、酵素(生体触媒)として機能するという働きを備えています。
こういった観点をヒントとして、従来からも水素結合等の弱い力を介して自然に組み上がる様々な分子集合体が開発され、その分子集合体の触媒機能について評価されてきました。
しかしながら、このような分子集合体に生体触媒のような触媒活性と立体選択性を付与し、キラル分子触媒として作用させることは非常に困難とされていました。
今回の研究では、これまでに開発してきた水素結合部位をもつキラルな有機化合物1分子を、シンプルなフェノール類3分子と組み合わせることで、イオン間相互作用(リン元素とフェノールの酸素原子部間)と水素結合(NH結合とフェノールの酸素原子間)に支えられた高次のネットワーク構造が自発的に組織されることを見出したというものです。
しかも、得られた分子集合体が、望ましい形に炭素と炭素をつなげて目的物のみを合成するための、高性能のキラル分子触媒として働くことを確認したというものです。
本研究成果は、8 月27 日付けオンライン版『Science Express』誌に(日本時間8 月28 日)に『Chiral Organic Ion Pair Catalysts Assembled Through a Hydrogen-Bonding Network 』とのタイトルで掲載されています。
今回の有機分子触媒の合成手法を活用すれば、集合体を構成する有機分子それぞれの形を変えることで、多様な構造の触媒群を容易に創り出すことができることから、分子触媒を自由にデザインするための新たな手法を提供するものです。
本研究成果を活用して、今後、医薬品などの有用化合物の効率よい安全な化学合成の道が開かれるものと注目されます。
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