ムペンバ効果について
少し前(2008-07-08)のNHKの【ためしてガッテン】でこの『ムペンバ効果』(Mpemba effect)が取り上げられていました。
冷蔵庫の製氷室での熱湯と20℃程度の常温の水の凝固速度の比較の実験や-20℃の冷凍室での熱湯と20℃程度を放水して熱湯の方が速く固まること等の実験を紹介していました。
当日の【ためしてガッテン】番組では、ムペンバが経験したアイスクリームの実験を紹介し、ゲストが回答するクイズ形式でどのようにしたらアイスクリームが速く氷ったのかを尋ねていました。
ムペンバ効果の発見となったこの実験では、ムペンバは、調理の授業中、アイスクリームミックスを熱いまま凍らせたところ、冷ましてから凍らせたものよりも先に凍ることに気付いたというものです。
何故かといった説明については、理論的に未だ解明されないと断った上で、実験の結果については、容器の形状との依存性があることを述べた上で、蒸発潜熱で熱が奪われることがこのムペンバ効果との関わりが深いというような趣旨だったと思います。
大月教授のブログのサイト『大月義彦のページ』で反論がされ、最近の7-31のブログでも『7月 第5回 【ムペンバ効果、再び】』と題して、自らの実験の紹介と共に以下のように結んでいます。7月22日の【ムペンバ効果】を取り上げたブログに続くものです。
「繰り返し結論を申し上げます。
『冷蔵庫で氷を早く作りたいなら、一旦、お湯にしてから冷やせ!』
とは、迷信です。
ムペンバ効果は、相転移の物理の新しい発見でもなく、まして新しい法則でもありません。
【ためしてガッテン】での実験では、エネルギーの収支からは、明らかに熱湯が氷になるのに多量のエネルギーを必要としていることは明らかです。
熱力学は、主として無限時間経過した平衡状態を取り扱いますが、今回の実験は、氷への凝固速度という過渡現象が問題となっています。
これは、熱力学というよりは、エネルギーと物質と相変化が関係する輸送現象の問題になります。
水の冷却に関係するのは、冷凍庫に入れた容器と空気の境膜の熱伝導と対流熱伝達と容器の熱伝導、水と容器の境膜の熱伝導と対流熱伝達、さらに水の蒸発に伴う潜熱、水と空気の境膜の熱伝導と対流熱伝達になるかと思われます。また水については、どこで氷っているかを判定すると過冷却状態も関係します。
熱伝達を考えるのにどこが熱移動のネックになっているかという点が問題になります。
空気と容器の間では、容器が水温と近似しているとすれば、温度差がありますが、水と容器との間には、温度差が小さく、これが熱移動のネックになると考えられます。
冷却速度を支配しているのは、容器を介しての水から冷凍雰囲気空気への熱移動については、水側の対流熱伝達が効いているように思われます。境膜熱伝達係数を計算する必要がありますが、これは、熱した湯が入っている水が有利ですが、温度が下がってくると同じ熱伝達になるように思われます。
もう一つは、水から空気への熱伝達ですがとくに水から空気への移動熱移動について空気側の対流熱伝達及び水側の熱伝達が影響します。水側は、蒸発の潜熱で表面から冷却され、水の対流を活発にする効果が大きいかと思われます。これから熱の移動で有利になります。また空気-水の温度差大きい状態では、空気の対流熱伝達は大きくなります。
湯の方が一度対流を起こして水が動くとその対流は、ある時間は持続するとすれば、対流熱伝達で有利な状態が継続することになり速く凝固することもあり得るかと思われます。
確かに容器の形状に相当依存すると思われます。
一方、明らかに低温の水の冷却については、初期からの流動が少ないため過冷却も起こりやすいとも考えられます。
水-容器-空気間の熱移動について詳細に計算すれば、『ムペンバ効果』は、否定する問題でもなく、ある特定の条件下で起こりうる現象といえると思われます。
大月教授のブログでの取り上げも、自らの実験結果なども披露され実証的に対応しておられますが、物理学者らしい明快な説明でもないように思います。
ただ大月教授の言われる、「『ムペンバ効果』相転移の物理の新しい発見でもなく、まして新しい法則でもありません」の結論はその通りと思いますが、この現象について熱交換機の設計をやっているような技術者は、このような現象について工学的にすっきりと解説できるように思います。
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